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嫌がる子どもの歯磨き その4/小指で歯グキをコチョコチョ

2012年01月05日

低年齢児の保護者より「奥歯より前歯の方が歯磨きを嫌がるのです。」という訴えが多い。
前歯の方が磨きやすそうなのに・・どうしてだろう?今回は、この理由について考えてみたい。

我々は主として視覚や聴覚でコミュニケーションをとっている。
それでは、新生児ではどうだろう。出生時の視力は0.03程度であり、まだ見えているとは言い難い。
聴覚においても、聞こえてはいるが同様である。
新生児は、脳の機能が未熟なため、これらの情報を処理できない。

ところで筆者は、「新生児の最大の感覚器官は口である」と考えている。
指で頬を触ると顔を指のほうに向ける。
(探索反射)
指で口唇を触ると口をすぼめ、あたかも指から母乳を吸いだそうとする。
(吸啜反射)
これら原始反射がなければ、生きていくことができない。

一方、嗅覚は発達しており母乳の臭いがわかり、嫌な臭いでは顔をしかめる。
味覚においても、母乳のみならず甘い味や苦い味を区別することができる。
まさに新生児の口は、鋭敏な感覚器官であり、これを通して世界を感じているのである。

しかし、鋭敏な感覚器官ほど強い刺激には弱い。
例えば、新生児は母乳を吸啜し嚥下する。
しかし固形物を与えると、舌は突出し取り込むことができない。
(舌の挺出反射)
もし嚥下すれば窒息の可能性があるためだ。
新生児にとって固形物は、異物であり強い刺激と言える。
しかし、このままでは固形食が食べることができない。
口腔感覚は、いつまでも鋭敏過ぎては困る。
そこで、徐々に固形食に慣らせる必要がある。

離乳のステップは、口腔の感覚を鈍感にすることでもある。
低年齢児が歯磨きを嫌う理由。
これは歯磨きが強い刺激のためではなかろうか?
また臼歯部より前歯部を嫌がる理由。
これは浸潤麻酔を考えるとよくわかる。
前歯部の方が痛みを感じやすいことは、臨床上よく経験する。
体の正中は、重要な器官が多く、感覚が鋭敏なためである。
従って、痛点も多い。
同じ理由で歯磨きも嫌がるのだ。

・・だとすれば、口腔を鈍感にしておけばよい。
触られることに慣れさせておけばよいのだ。
そこで筆者は、1歳の誕生日の頃から、小指で歯グキを触ることを勧めている。
この頃、上下顎の前歯しか生えていない。
そこで、臼歯部の歯グキをコチョコチョ触るのだ。

(図1)

まず小指の力を抜き、指先で“かわいいね。”と話すように、やさしく頬を触る。
嫌がらなければ、歯グキに移る。
嫌がれば、そこで止める。
決して無理強いしない。
やさしく触れ気持ちいいと、副交感神経が優位になりリラックスする。
これを繰り返していると、他の子どもと比べ歯磨きを嫌がらなくなる。
子どもが触られるだけでなく、保護者自身も触ることに慣れる。
是非、試していただきたい。

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