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【4】血液サラサラ系のお薬、こうイメージすれば理解しやすい!

2016年11月21日

こんにちは。米永一理(よねなが かずみち)です。

前回は指向を変えて最近のキーフレーズ“NBM (Narrative-Based Medicine)”
に述べましたがいかがだったでしょうか。

2016年11月号のザ・クインテッセンスの特集にも関連内容を掲載しておりますので、もしよければご参照ください。

さて、今回もとくに教科書には書いてないけれど、患者さんや家族から「歯医者さんのお話ってわかりやい!」
と言われるような内容をまとめみようと思います。

今回は、血液サラサラ系のお薬である抗凝固薬および抗血小板の考え方に関してお話をします。

まずは、生理学の基本的な事項を復習してみましょう。

出血をすると凝固因子と血小板の協調により止血されます。

具体的には、出血が起こると一次止血として、
血小板はまさしく板のように集まり出血を止めようとします。

次いで二次止血として、フィブリノゲンを中心とする凝固因子が、
セメントのように血小板を塗り固めて、補強することで止血されます。

これがいわゆる血栓です。

血液をサラサラにするお薬には、これらのどちらかに作用するものが多いです。

たとえば、バイアスピリンは抗血小板薬で、一次止血を起こしにくくするお薬であり、
ワーファリンは抗凝固薬で、二次止血を起こしにくくするお薬です。

また血栓には、白色血栓と赤色血栓の2種類があります。

白色血栓は一次止血機構が主体の血小板血栓が主体であり、動脈性血栓ともいわれます。

動脈性血栓は、動脈が静脈に比べ細く、血流が速いことに起因し、血管内皮細胞を損傷することで血小板が引っかかり、
対流することで起こります。

よって、治療には抗血小板薬のバイアスピリンなどを用います。

一方、赤色血栓は二次止血機構が主体であり、
フィブリノゲンがトロンビンの作用で変化したフィブリン血栓が主体であり、静脈性血栓ともいわれます。

静脈性血栓は、静脈の血流が遅いことに起因し、
凝固系因子が働いて血栓の形成を行うことで起こります。

よって、治療には抗凝固薬を用います。

この抗凝固薬は作用時間によって、予防(再発予防を含む)のために遅発性に作用するワーファリンなどの内服薬を用い、
発症したら速攻性のヘパリン(点滴)を用います。

血栓症の起因する病態として、
白色血栓(動脈性血栓)は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの動脈硬化性疾患、不整脈、弁膜症、血管炎などがあります。

赤色血栓(静脈性血栓)は、血流のうっ滞、凝固機能亢進、凝固防止機能低下などがあります。

白色血栓(動脈性血栓)の代表疾患としては、
脳梗塞(脳血栓)、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などがあります。

赤色血栓(静脈性血栓)の代表疾患としては、
肺塞栓、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)、心原性脳梗塞(脳塞栓)などがあります。

ここで間違えやすいのが、心房細胞による心原性脳梗塞は、
心房の血流のうっ滞による血栓のため赤色血栓に含まれるということです。

なお、梗塞症は、血栓または塞栓により起こり、
血栓はその場で血管が詰まることであり、
塞栓は遠方にできた血栓が血流に乗って飛んでくることで血管が詰まることです。

日本では60歳以上の高齢者の数%の人が血液をサラサラにする薬を飲んでいるといわれています。

高齢になると脳を含めた各器官が萎縮し、各結合組織が疎となります。

そのためちょっとした刺激で細血管が断裂し出血しやすくなります。

よって、脳出血などの致命的な出血を起こすリスクが高くなるため、
脳血管領域では、基本的には血液サラサラ系のお薬は抗血小板薬か抗凝固薬のどちらかより重要な1種類のみとする傾向にあります。

一方で、循環器領域では、心筋梗塞などで冠動脈へのステント留置した後では、
白色血栓、赤色血栓を厳密に分けることはできず、心筋梗塞による死亡率の高さから、
抗凝固薬および抗血小板薬の療法が処方されることがあります。

抗凝固薬は、患者さんのコンプライアンスや人柄を、主治医の先生がどのように見ているかわかることがあります。

抗凝固薬として、ワーファリンが長らく使われてきました。

ワーファリンは、凝固因子の2、7、9、10番を複合的に阻害する特徴があります。

学生時代、「肉納豆:2、9、7、10」で覚えたのではないでしょうか。

ワーファリンは、遅延性の作用のため、
効果が現れるまで内服開始後1週間程度かかり、半減期が1週間のため、
投与中止後1週間程度以上待たないと効果の低下が実感できません。

また、体調などによって凝固因子への働きが変わるため、
1か月に1回の採血により、PT-INRの測定をし、マメなコントロールが必要です。

また、ビタミンKを多く含む食事(納豆など)の制限があります。

しかしながら、薬価が1日数十円程度であること、
飲み忘れても、飲み過ぎても多少であれば許容できること、
効きすぎた場合はリバース薬(メナテトレノン注射液)があること、
腎機能障害やその他の全身疾患を併発していても、比較的使用しやすいことなどのメリットも多く、
とくに服薬コンプライアンスの悪い方(認知症の患者さんなど)には、
あえてこちらを処方することがあります。

一方で、2011年より順次使用が開始された新規経口抗凝固薬(NOAC)であるダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは、
非常に薬効の立ち上がりが早く、厳格なコントロールも基本的には不要なため、患者、医療者ともに経済的負担以外は楽であることが多いです。

ただ、使用できるのは他の全身疾患が比較的ないなどの制限があること(詳細は省きますがCHADS2スコアなどで判断します)、
薬価がいずれも1日500円近くすること、半減期が24時間程度であるため、
飲み忘れがあると逆に血栓塞栓症のリスクが上がるという問題点があります。

今回、熊本地震や鳥取地震がありましたが、自然災害の多い本邦では、
災害後お薬の確保が困難となることがあり、
そのようなときには半減期の長いワーファリンのほうが安心かもしれません。

なお、昨年4月に国際血栓止血学会で、
すでに「新規」ではなくなってきたことから、
NOACではなく、直接経口抗凝固薬(DOAC)というように勧告がなされ、
循環器学会などではDOACを使用するようになってきています。

ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死(BRONJ)もMRONJとなり、
今年8月にARONJとなりました。

用語も刻々と変化していくことを実感します。

ワーファリンは、PT-INRが年齢によりますが、
最低1.5以上でコントロールされます。

歯科では、抜歯などの処置の際は、基本的にはワーファリン内服のまま施行し、
できるだけ直近のPT-INRを確認されているかと思います。

とくに炎症などがあったり、歯痛で食事ができていない時などは、
PT-INRが大きく変動する可能性があります。

実体験として1か月ほど前の採血でPT-INRが2台であった患者さんが、
食事ができないと受診された時のPT-INRが12近くまで上がっていたことがあります。

つまり、1週間前のPT-INR値は参考にはなるものの、
今の患者さんの状態を示していない可能性があります。

また、興味深いことに、
PT-INRは低ければ抜歯の際に安心かというとそうともいえません。

PT-INRが、「1」の場合、「1~1.5」の間の場合、「1.5以上」の場合では、
「1~1.5」の間の場合がもっとも梗塞症が起こりやすかったとの報告もあります。

つまり、PT-INRが1.3ぐらいは、逆に怖いなと思っています。

2016年9月にダビガトランの特異的中和薬であるイダルシズマズ(プリズバインド)注が本邦でも承認されました。

DOACのなかで唯一ダビガトランでリバースができるようになったことは、
緊急手術や、止血困難時に心強く、処方薬選択が変化してくることが予想されます。

有病者歯科、ひいては医科歯科連携のためには、つねに最新の情報が必要です。

日々是勉強だなと改めて感じる今日この頃です。

さて、今回のまとめです。

 [1]血液サラサラ系の薬には、抗血小板薬と抗凝固薬がある
 [2]白色血栓には抗血小板薬を、赤色血栓血栓には抗凝固薬を用いる
 [3]抗凝固薬の種類で、患者さんのコンプライアンスがわかる

次回は、「脳科学的に考える口腔領域の大切さ」に関して記そうかと思います。

※本メールマガジンは、わかりやすくするために「ざっくり」とした内容です。詳細は各領域の成書をご参照ください。

東京大学医学部附属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科 助教
医学博士(東京大学)
米永 一理