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【3】どうしていますか? スタッフの役割分担

2016年05月02日

こんにちは。埼玉県開業の関根です。

前回は、先生方が自院をどんな医院にしていきたいのかを、「医院理念」という形で確認していただきました。

今回は、その理念を現場に落とし込むために当院で行っているスタッフの役割分担について紹介したいと思います。

 
1)スタッフの役割分担が大事なワケ

今から11年前、私が関根歯科医院をスタートした頃は、現在と比べると明確な役割分担はありませんでした。

それでも極力、歯科衛生士、歯科助手、受付がそれぞれ自分の職種に応じた業務を行うというスタイルをとっていました。

なぜなら、1人のスタッフが、ある時は口腔衛生指導を、ある時は診療補助や備品管理を、またある時は会計を、
というのでは、身につけなくてはならないことが多すぎ、業務内容を標準化することが難しいと感じたからです。

そのため、歯科衛生士は患者さんを担当し、歯科助手は診療補助や器具・設備の管理をし、受付は予約・会計・物品の在庫管理というように、
それぞれがメインの業務に集中できるようにしました。

その結果、よかったと思うことは、

 [1]それぞれの業務に専念できることで、より仕事の質をあげることができる
 [2]業務の範囲が絞られていることで業務内容を一般化しやすい
 [3]スタッフの退職、入社の際にも、必要な職種のスタッフを募集し教育することで全体に与える影響が少ない

などがあります。

 
2)スタッフに任せる勇気が必要です

このように、役割分担には多くのメリットがありますが、この役割分担がうまく機能するうえで壁になったのが、またもや院長である自分自身でした。

第1回目でも出てきた「鬼軍曹型院長」を覚えていますか?

バリバリの鬼軍曹スタイルだった私は、人に仕事を任せることが苦手でした。

何をやるにしても「自分がいちばんわかっているのだから、自分でやるのがいちばん早いし、うまくできる」と勘違いしていたのです。

忙しくなり、自分の手が足りなくなれば、周りのスタッフを頼るしかないのに、それでも「自分があと10人いればなぁ」と、
ありえない妄想をしながら一人相撲を取っているような感じでした。

任せるということは、単にやらせることとは違います。

つくづく仕事を任せるということには勇気が必要だと痛感しました。

考えてみると、歯科医院は男性よりも女性が多く働く職場です。

実際に女性スタッフと一緒に仕事をしていると、「男性と女性では得意な分野が違うなぁ」と感じることがよくあります。

患者さんに対する心配りや、会計、在庫などの細かい数字の管理は、おおざっぱで無頓着な私より、
そういう部分が得意な女性スタッフに任せるほうが効率がいいでしょう。

任されたスタッフも、自分の得意分野の仕事をしているわけですから、やっていて手ごたえを感じやすいですし、
さらに工夫をしてよくしようという、良い意味での欲が出てきます。

頭を冷やして考えてみると、なんでも自分がやらなければ気が済まないというのは、私の独りよがりだったようです。

今は、自分が10人いるより、自分以外に9人のスタッフがいたほうが、医院としての成果は大きいと心から言えます。

 
3)医院の部門化で、スタッフに責任感をもってもらう

関根歯科医院では、役割は部門化という形で表れており、
すべてのスタッフが「治療部門」「予防部門」「小児部門」「支援部門」のいずれかに所属しています。

(図1)
第3回関根先生図1_k

「治療部門」は、歯科医師と歯科助手、歯科技工士で構成されており、成人の治療を担当する部門です。

「予防部門」は、歯科衛生士が所属しており、成人の患者さんに対する初期治療や予防処置を行います。

「小児部門」は、歯科医師と歯科衛生士、歯科助手が、子どもたちの治療やメインテナンスを担当しています。

「支援部門」は、受付スタッフが全体の予約、会計といった受付業務と物品管理等を行います。

 
 
また、各部門のなかでもそれぞれが、滅菌消毒、啓発、データ管理というように、個人としての役割を担っています。

最終的には、新人以外のほとんどのスタッフが何かの役割、責任者になっています。

複数の人間が集まれば、自然と中心になる人と、言い方は悪いですが、その他大勢というふうに分かれてしまいます。

その他大勢の中にいては、どうしても主体性をもって取り組むというよりは他人任せ、指示待ちになってしまいます。

そうならないためにも、役割の大小はありますが、すべてのスタッフが自分の役割をもつようにしています。

また、お互いに、誰が何の役割を担っているかを知っていますから、自然と自分の役割に対しての責任を感じるようになります。

このような役割分担は、何も大型の医院にだけ当てはまるものではありません。

たとえば、歯科医師が院長先生1人、歯科衛生士2人、歯科助手1人、受付1人という総勢5人のクリニックではどうでしょう。

これくらいの規模であれば、院長が1人ですべてを管理することも十分可能かもしれません。

しかし、そこであえて業務を分担し、それぞれのスタッフに役割分担をしてみるのはいかがでしょうか。

一例として、役割分担図を示します。

(図2)
第3回関根先生図2

このような業務の分担は、すでになんとなくできているという先生も多いと思います。
それを担当するスタッフにきちんと役割として伝えるところから始めてみるといいかもしれません。

 
4)「何でも屋」ではなく、専門スタッフとして

しかし、ただ単に「よろしく!」と丸投げされてしまっては、任されたスタッフも困ってしまいます。

そこで任せる以上は、それぞれの役割を明確にすることが重要です。

たとえば、

 [1]その役割の範囲はどこまでか
 [2]どの程度の権限があるのか
 [3]その役割に求められる結果は何なのか

などをはっきりさせるということです。

そして次に、

 [4]結果を出すための計画を立てること
 [5]結果が出ているかを客観的に評価できる指標を設定すること

が重要です。

最初は各担当者と一緒に[1]~[5]を考えることから始めてみるといいと思います。

ぜひ先生ご自身も一緒に考える機会を作ってください。

当院の場合、各部門の責任者にまず医院理念に基づき、自分の部門がどのような結果を出す必要があるのかを考えてもらいます。

当院の理念は
「関根歯科院を訪れた人に歯科医療を通じて“安心”を提供する」

というものですから、たとえば技工部門が提供できる“安心”とは何なのか、
同様に滅菌管理という立場なら、受付という立場なら、
どんな“安心”を提供できるのかを考えてもらいます。

そのなかから、優先順位の高いものをそれぞれの部門の部門目標とし、それに基づいた達成計画を立ててもらいます。

そして、それに沿って毎日の業務を行います。

それぞれのスタッフが要領を得て、先生の手から独り立ちするまでには時間が必要かもしれません。

私も「これならやっぱり自分がやったほうが早いのではないか」と思うこともしばしばありました。

しかしその時期を越えると、私の頭の中に散在していた“考えなくてはならないことリスト”が徐々に減っていき、
本当に自分がすべき仕事に集中できるようになっていきました。

そのぶん、周りのスタッフが自分で考え、実行してくれているということですね。

このように、ある程度の仕組みのなかでめざすゴールを共有し、
ゴールにたどり着くプロセスについては任せるようにすれば、とんでもない方向へ行ってしまうことはなくなり、
そのうえで本人が自分の頭で考えたり、工夫をしたりする部分が出てきます。

当院のスタッフたちを見ていると、自分で考え、工夫するようになって初めて、その人の良さが出てくるように感じます。

自分の長所を使って仕事をしているスタッフは楽しそうです。

そのようなスタッフが出てくればもう「あと1人自分がいれば……」なんて言わなくて済みますね。

埼玉県北本市開業・医療法人惠仁会関根歯科医院
関根 聡
⇒ http://www.sekine-dc.jp/