MAIL MAGAZINE メールマガジン

医院に活気を生むスタッフとの上手なコミュニケーション【5】リーダーシップとコミュニケーションが活気あるチームをつくる

2015年12月07日

(1) スタッフと「仲良くすること」と「受け入れられること」とは違う

このシリーズのテーマは「医院に活気を与えるスタッフとの上手なコミュニケーション」ですが、
そうしたコミュニケーションを取るためには、どうすればいいのでしょうか。

多くの人は、ノウハウを知り、テクニックを身につければ、そうしたコミュニケーションを取ることができるようになる、
と考えているのではないでしょうか。

でも実は、その前にやらないといけないことがあります。

それは「この人のいうことは聞こう」と思われる人になること。

前回、人間の脳は、まず感情で情報を下処理した後、論理的に考えるというプロセスで思考するようにできている、というお話させていただきました。

このようなプロセスで思考するので、どんなにノウハウやテクニックを駆使しても、感情のフィルターではねられると、
いいコミュニケーションを取ることはできないのです。

その結果、たとえば、
Aさんにいわれたら素直に受け入れられるけど、
Bさんにいわれたときは反発してしまう、
といったことが起こるわけです。

では、感情的に受け入れられるために、どうすればいいのでしょう?

そう考えたときに、多くの方が考えるのが「スタッフと仲良くなる」ことだと思います。

そのために、とくに若い院長先生を中心に、こまめにコミュニケーションを取ったり、食事会を開くといった努力をしている医院も増えています。

でも、「仲良くなる」というのと、「受け入れられる」というのは実は違うのです。

もう少し具体的にいうと、私生活であれば仲良くすることで、いっていることを受け入れてもらえるようになるのですが、
仕事においてはそれだけではダメです。

たとえば、クラブ活動などをイメージしていただけるとよくわかると思います。

活気のあるチームというものは、確かに上級生も下級生も、キャプテンもコーチも仲がいい。

冗談をいったり、何でも気軽に話し合える、本当に気のおけない関係です。

でも、練習や試合中は、この上なく厳しくなり、トップダウンで全体がひとつにまとまるのです。

(2)活気あるチームにするにはリーダーシップが不可欠!

このように、仲良くなる部分と、厳しい部分の使い分けがきちんとされているのが、活気のあるチームであり、組織です。

時々、「うちはスタッフとも、スタッフ同士も仲がいい」といいながら、
残業を頼んだり、休日に勉強会への参加を提案するなど、仕事に関することになると拒否されると悩んでいる院長にお会いすることがありますが、
これなどは、使い分けがされていない典型的な事例です。

また、仲良くなるためのさまざまな取り組みをした結果、
逆に、院長や勤務医にタメ口で話しをしたり、言いたいことをいうようになったという医院もあります。

活気があるチームや組織をつくるためには、リーダーシップが不可欠になります。

リーダーシップがあれば、仲良くなっても「なあなあの関係」になることはありません。

リーダーシップを辞書で引くと

「指導者たる地位または任務。指導権。指導者としての資質・能力・力量・統率力」

と書いてあります。

これを見てもわかるように、リーダーとリーダーシップは別物になります。

リーダーとは役割行動であり、リーダーシップは組織内でのポジションに関係なく、
問題やタスクを解決する必要があったときに、その解決に必要な周囲の人びとを巻き込んで引っ張っていくことです。

つまり、トップにはトップの、平には平のリーダーシップが求められるものなのです。

ただ、上司がリーダーシップを発揮していなければ、部下もリーダーシップを発揮することはありません。

そして、上に行けばいくほど、リーダーシップを発揮しやすい条件と裁量などの条件が整うので、
リーダーシップがないとそれが目立ち、人心が離れていくことになってしまいます。

(3)自分とのコミュニケーションこそがリーダーシップを生む

ドラッカーは、リーダーシップは賢さに支えられるものではなく、一貫性に支えられるものであるといってます。

目標を定め、優先順位を定め、基準を定め、それを維持する者

それこそが彼のいうリーダーシップなのです。

そして、リーダーとして認められるには、リーダーシップを地位や特権ではなく、責任と見ることであるともいっています。

「優れたリーダーは常に厳しい。事がうまくいかないとき、そして何事もだいたいにおいてうまくいかないものだが、その失敗を人のせいにしない」
(『プロフェッショナルの条件』より)

こういったリーダーシップを発揮しようとするとき不可欠なのが「自分自身への確信」です。

リーダーシップは、他人への影響力であり、人を動かすものですが、
その根っこにあるのは自分への影響であり、自らを当事者として動かすものなのです。

最後の責任を取ることまで含めて、腹をくくれば自分に確信を持つことができるようになります。

そして、一貫性があれば、リーダーシップを発揮するのは難しいことではなくなるのです。

この一貫性を維持するには、自分とのコミュニケーションが重要になります。

思考とは、自分に問いかけ、その答えを導き出す行為に他なりません。

そして、脳は方向性を与えられると、その質問に沿った答えを探し出そうとする性質を持っています。

たとえば
「どうしてできないんだ?」と問いかければ、現在の環境や過去の体験の中から、脳はできない理由を探そうとし、
「どうすればできるんだ?」と問いかければ、外部と内部からできる理由を探そうとします。

このように、質問の質と答えの質は常にイコールになります。

(4)プラスの言葉がプラスの結果を導く

話が飛びますが、多くの成功者が「言葉の重要性」を唱えるのもこのためです。

思考は言語で行われるので、
マイナスの言葉を使って問いかければマイナスの結論を、
プラスの言葉を使って問いかければプラスの結論を。

同じテーマでも、使う言葉によってまったく異なる結論になるのです。

リーダーシップを発揮するには、経営者・院長はブレてはいけません。

先月は、あれをすると発表したのに、今月は、別のことをすると発表する。

昨日は「患者満足が大切だ」といったのに、今日は「収益を出さなければいけない」いう。

これでは、部下はついてきません。

一度、目標や解決すべき問題を明確化したなら、それを達成することにこだわり、自分にはそれを成し遂げることができるという自信を持って、
自分とそれを実現するためのコミュニケーションをしっかり取ること。

そうすれば、自然と部下にリーダーシップを示すことができるようになります。

「スタッフとどのようにコミュニケーションを取れば、活気のある組織ができるのか?」と考える前に、
「自分とどのようにコミュニケーションを取れば、活気のある自分になることができるのか?」を考えるべきなのです。

医療法人社団いのうえ歯科医院 理事長
歯学博士・経営学博士
井上 裕之
⇒ http://www.inoue-dental.jp/