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自分の「運」は自分で開く【5】成功のカギは「智・運・命」

2015年09月24日

(1) 真珠王・御木本幸吉さんの「智・運・命」

日本発のさまざまな発明や技術がありますが、世界で最初に養殖真珠をつくり出すことに成功したのは、ミキモトの創業者・御木本幸吉さんです。

この御木本幸吉さんが、世界ではじめて真珠の養殖に成功したのは1893年7月のこと。

長年の苦労の末、現在の真珠養殖の方法を考え出したのです。

戦前のことですが、この人工真珠の発明は、エジソンの発明に次ぐ世界的な大発明といわれました。

今やそのミキモト真珠は世界的に有名です。

ところで、あるとき、三重県の鳥羽にある御木本幸吉記念館を見学する機会があったのですが、そこに展示されていた御木本翁の日常愛用品の中に奇妙なものがありました。

易占いに使用する「筮竹」(ぜいちく)があったのです。

この筮竹には“翁ご愛用の品”とは書かれてありますが、詳しい説明がありませんでした。

係の人に説明を求めると、「翁は健康のために筮竹を両手に持って、チンジャラ動かしておられました」「気分転換のお楽しみでした」とのこと。

しかし、ただそれだけのことでしょうか?

真珠養殖に全財産を打ち込んだ御木本幸吉さんにとって、養殖に成功できるかどうか、毎日が不安の連続であったはずです。

占いに心をひかれたとしても自然なことではないでしょうか。

後日、御木本翁に関する伝記や記録を図書館で調べてみました。

専門家顔負けの「占い通」で、易にも人相学にも知識があったそうです。

御木本翁の記念館の片隅に飾られている占いの筮竹には、それなりのいわれがあったのです。

御木本翁が好んだ座右の言葉にも「商売成功の秘訣」は、「智・運・命」であると記されていました。

「智・運・命」とはいったい何を示しているのでしょうか?

まず「智」は、アイデアや知識を表しています。

3つめの「命」は、生命力、バイタリティを示しています。

仕事で成功するには、アイデアは重要ですが、アイデアが優れていても、それだけで成功するわけではありません。

粘り強くがんばるバイタリティが必要です。

さらに、「運」=偶然の運に恵まれること、運の強さが必要だというのです。

仕事の成功の秘訣は、「智・運・命」がそろうことだといいます。

(2)成功の95%は運によるもの

また、ある生命保険会社が、上場企業の40歳サラリーマンに「人生設計」に関するアンケート調査を行ったことがありました。

この中に、「ツキや運・不運が、自分のこれまでの生活に影響したと思うかどうか」という質問があったのです。

その結果、40歳のもっとも働き盛りと思われるサラリーマンの8割が、「運・不運を経験した」と答えていました。

さらに興味深いことは、課長・部長といった役職がある人のほうが、運・不運を感じていることが多くなっていることです。

40歳で部長以上に出世しているサラリーマンになると、95%が「運の力が存在した」とはっきり答えていたそうです。

世界最大の通信販売会社であった「シアーズ・ローバック」社の創始者ローゼンワルトは、自分の著書の中で、次のようなことを書いています。

「成功の95%は運によるものである。あとの5%が本当の能力によるものだ。私の周りには、私と同じくらい手際よく仕事を切り回している人は多い。しかし、惜しいことに、その人たちは運に恵まれていない。私とその人たちの違いは、ただそれだけのことである」

人間の能力や才能には、それほど大きな差はありません。

まして、同じように大学を卒業し、同じような環境の中で仕事を続けているサラリーマンの場合、係長止まりで終わる人と、重役になる人との間に、本質的に極端な能力の差はないはずです。

ローゼンワルトの語るように、運の差が要因の一つではないでしょうか?

(3) 「運命」とは「性格」である

アメリカで大ベストセラーになった『成功の条件』の著者ウエイトレーもよく似たことをいっています。

いろいろな方面で成功している人たちに共通しているのは、才能・能力もさることながら、「運に恵まれていたこと」を無視できないというのです。

問題なのは、その運とはどんなものかということ。

「運」をどのようなものと考えるかの差が、うまくいくかどうかの分かれ目になるといえるかもしれません。

「運」というと、すぐ星占いや姓名判断・人相などで判断される運命判断的なものを考えてしまいがちです。

運命判断は、運を知る一つの手がかりではありますが、人生を支配している運そのものではありません。

なにか悪いことが自分や家族に起こると、名前が悪いせいではないか、厄年であったり、家相が悪いせいではないかと不安になることもあります。

こんなとき、改名をしたり、印鑑を変えようとする人もよく見かけます。

しかし、それは運を根本的によくすることにはなりません。

もしそんな単純なことで人生の悩みがすべて解決されるとしたら、世の中の占い師はすべて大金持ちになり、幸福になっているはずです。

人生にはたしかに運・不運があります。

うれしいこともあれば、また悲しいこともあります。

不運だと嘆いている人たちは、本当に不運であるというより、不運であると悲嘆的に考えすぎて、ますます自分をみじめにしている場合も多いのです。

「運命は性格である」といった心理学者もいます。

たとえつらいこと、不幸なことが起こっても、それにどのように対処していくかは、その人の性格によって違ってくるのです。

儲ける人と損をする人の違いは、儲けたときより、大損をしたときの態度に現れます。

株で失敗する人は、損をしたときかえって無理をしたり、絶望的になって精神的に混乱してしまう人です。

損をしたとき、じっと耐えて次のチャンスを待てる人は、いつかまた儲かります。

患者さんが減っていて、医院経営がうまくいかないときに「智・運・命」という言葉を思い出してみましょう。

いくら努力してがんばっても、運がツイてないときはあるのです。

うまくいかなかったり、失敗したりしても、今はただ単に「不運」だったと楽天的に考え、また次のチャンスに備えることが大事でしょう。

日本占術協会名誉会長
浅野 八郎
http://www.asano-8.jp