スマートフォン版サイト

MAIL MAGAZINE メールマガジン

もしも、スタッフが院長の立場に立ったなら・・・~スタッフの視点で、歯科医院のマネジメントを考える~【4】スタッフができる“スタッフが育つ”医院の風土づくり

2014年02月27日

「スタッフが定着せず、すぐに辞めてしまう」――これは多くの院長の悩みのタネです。

「医院の雰囲気が合わない」「院内の空気が重い」が、必ず退職の理由の中にあげられています。
医院の雰囲気・空気というものは、スキルや知識、理屈ではなく、肌で感じる瞬間的なものなのかもしれません。
今回は「医院の風土」について、スタッフ視点からのマネジメントを考えてみることにします。

(1)院内の重い雰囲気が新人スタッフをダメにする

新人スタッフの退職理由としては「医院の雰囲気に馴染めない」「自分が何をしたらいいのかわからない」「質問ができない」「次から次へと覚えることが多くて(自分には)できそうにもない」などもよく聞きます。

一般企業の調査データからも、新入社員の早期離職(入社3年を目安)の理由の上位に上がっているのは「個人特性と仕事内容とのミスマッチ」「周りの社員のサポート不足」「本人の努力不足」「育成担当者の力量不足」「社風に馴染めない」などで、業種にかかわらず、共通しているようです。

以前、ある医院で、新卒歯科衛生士の採用にあたって、「新人教育マニュアル」を作成して、採用後には、綿密な「教育カリキュラム」に沿って、きめ細かく教育をしていたところ、1ヵ月もしないうちに、新人スタッフから「たくさんあって、難しくて、息が詰まってしまう」と、SOSを訴えてきました。

当時、新人教育を担当していた歯科衛生士キャリア15年のリーダーは「院長から、新人が辞めたら、君のせいだよ」とプレッシャーを掛けられ、「なんとしても、私がやらなくちゃ!」と、不安と責任感の狭間で悩んでいました。
そして、他のスタッフには「口出ししてはいけない……」という医院の重い雰囲気があったようです。

そこで、どのように医院の雰囲気を変えればいいのか、スタッフ皆で考えました。

その結果、「“新人教育”という言葉そのものが、上から目線だし、“教える側”と“教えてもらう側”という見えない壁があるので、新人をチームの一員として迎えると考えたい」という若いスタッフの意見が起爆力となり、「スタッフ全員で、新人を育てよう」というシンプルなキーワードをつくり、再認識したのです。

このようにキーワードをつくることによって、スタッフが何を基準に判断・行動していけばよいのかという判断基準ができ、「スタッフ全員で、新人を育てよう」という職場の雰囲気を、理解→浸透→定着させていくことにつながりました。

(2)新人でも仕事に取り組みやすい医院のキーワードをつくる

とくに、日常の診療業務を通じて、仕事を覚えるという時期は、新人教育マニュアルに沿ったような患者さんばかりでないですし、ましてマニュアルどおりにはいかないものです。
新人スタッフからすれば、「今やっていることが、何につながるのかわからない」とか、「あれこれ、たくさんいわれても、かえって混乱してしまう」という悩みもよく聞こえてきます。

このような場面でも、「シンプルなキーワードで伝える」ということが効果的です。

まず、大枠の診療指針・基本姿勢をシンプルなキーワードにして、そのキーワードから、「自分がどのように行動すればよいか」がわかることを伝えることです。
それが日常の仕事を取り組む姿勢となり、徐々に自覚し、成長につながっていきます。

シンプルなキーワードには、患者さんを軸においたものでもよいでしょう。

たとえば、医院全体のキーワードとして「患者さん満足の向上」とワンフレーズで設定するとします。

受付では「患者さんをお待たせしない」、診療室では「患者さんに質の高い技術の提供」、裏方となる消毒滅菌の担当者には「徹底した感染予防管理」など、「患者さん」という軸は同じで、次に、やる仕事に応じて、具体的な仕事内容をイメージさせていくものにします。
そのキーワードを意識することで、新人が「自分がすべきことは何か」を認識することができ、自分で考えて行動する習慣が形成されるものです。

(3)シンプルなキーワードをつくるポイント

シンプルなキーワードを常に繰り返しながら、できることを増やしていくことが、仕事の幅・質・量を広げていくことになります。

先ほどの事例でも、新人のSOSには「たくさんあって、難しくて、息が詰まってしまう」というのがありましたが、情報を多く出しすぎてしまうと、「医院で、一番大切なことは、これ!」「この仕事で、大切なことは、これ!」ということが伝わらなくなってしまいます。

新人を育てる―ということは、長期戦です。
できることを1つひとつ増やしていく、成功体験を積み重ねていくということは、新人スタッフにとって自信につながるものです。

なお、シンプルなキーワードをつくるには、スタッフが主体となってつくるのが一番効果的です。
自分たちで医院のことを考えると、スタッフの意識統一でき、自ずと医院全体のベクトルを合わせることにつながるからです。

シンプルなキーワードを設定するポイントは、次の3つです。

・医院として重要視していること(したい)ことを軸にする
・言葉は、シンプルでわかりやすくもの(ワンフレーズ)
・スタッフ全員に繰り返し周知し、共通認識とする

もうすぐ春、新人を迎える準備をする時期と思います。
そのためにも、医院の風土が、明るく活気があること、一体感を保つことは大切です。
ぜひ「シンプルでわかりやすいキーワードづくり」を実践してみてください。

 株式会社ディネット取締役
 品質マネジメントシステム審査員
  三浦 綾子 
 ⇒ http://www.dnet-inc.com