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ミュータンス菌の母子感染に思う その4 ミュータンス菌の存在と生活習慣

2013年10月18日

感染とは、病原体が宿主の体内に侵入した後、定着し増殖することを指す。
従って、病原体が侵入しても定着しなければ感染とは言えない。
さてミュータンス菌の特徴は、二糖類であるショ糖を分解し歯に付着する不溶性のグルカンを作ることである。
しかし通常、他の菌はブドウ糖などの単糖類しか分解することができない。
例えば、ウマやウシは、草の食物繊維であるセルロースを食べ分解することができる。
しかし、ヒトは食べても分解することができないのと同じなのだ。

さて今、乳幼児がショ糖を食べたとしよう。
口の中では、ミュータンス菌のみがショ糖を食べる。(注1)
他の菌は指をくわえて、それを見ているだけなのである。
この状態が続くと、ミュータンス菌が増え齲蝕ができる。
逆に言えば、仮にミュータンス菌が親から小児の口腔内に侵入したとしても、ショ糖がなければ定着の可能性が低くなると考えられる。

そんな仮説を持ち幼稚園児を対象に調査を行った。
まず齲蝕のない園児を対象にミュータンス菌の存在について調べた。(注2)

その結果、約70%の園児にはミュータンス菌はいなかった。

(図1)
photo1

同時に、菌の存在と関係の深そうな生活習慣についてアンケート調査を行った。
そして菌の有無と生活習慣との関係について調べた。

この分析方法では、左にシフトするほど菌の存在の可能性が高く(黄色)、右に行くほど低くなる(青色)。(注3)
またその絶対値が大きいほど、菌の存在との可能性が強い。

(図2)
photo2

その結果、間食回数が最も菌の存在との関係が強く、3回以上では可能性が高く2回以下では低かった。
次が甘い食べ物を食べ始めた時期であり、続いて保護者の齲蝕罹患状態と続く。
全体的に眺めるとミュータンス菌の存在には、乳幼児期の食生活の項目が強く関与していた。
ちなみに“口移し”は、今回の調査では関係が認められなかった。

これまでミュータンス菌の感染予防には、口移しで食物を与えないことに主眼をおかれてきた。
しかし宿主(小児)の因子も重要な因子と言える。
すなわち甘い食べ物を控えることが、ミュータンス菌の定着を防ぎ感染予防の第一歩でもあるのだ。

(注1)同じレンサ球菌のサリバリウスなどもショ糖を分解する酵素を持っているが、ミュータンスとの違いは、不溶性のグルカンは作らない。
(注2)Dentocult-SM Strip mutansを用いた。
(注3)林の数量化理論Ⅱ類を用いた。

参考:岡崎好秀,他:ミュータンス連鎖球菌数と小児の生活習慣の関係について,小児歯誌,40(4):693-700,2002.
本論文は以下からダウンロード可能です。
 ⇒ http://okazaki8020.sakura.ne.jp/report/mutans.pdf

 前 岡山大学病院 小児歯科 講師
 モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
 歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
 岡崎 好秀
 ⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/