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指しゃぶり考

2010年08月02日

乳幼児歯科健診では、指しゃぶりについて質問されることが多い。

“指”の字源は、“手偏”に“旨(し)=離れる”という意味である。

出生時に握っていた手が、1本ずつ離れていくのが指なのだろう。

しかし同時に“指”の字は、“手編に旨(うま)い”と書く、やはり指は旨いからしゃぶるのだろうか?

さて、指しゃぶりの主な弊害は、開咬や上顎前突があげられる。

これが発端となり弄唇癖・舌突出癖を引き起こし口呼吸の原因につながる。

しかしこの指導は、小児の成長発達を考慮して慎重に行う必要がある。

すなわち開咬にいたる指しゃぶりは、その頻度・強さ・時間によって影響されるので、その程度に合わせた指導を行うべきである。

例えば早期に習癖が消失し、口腔周囲筋に問題がなければ、自然治癒する可能性が高い。

しかし習癖が1年半以上続くと、3才時で開咬や上顎前突になる場合が多く、1年未満では大きな影響は認められない。

ここで指しゃぶりに対する母親の葛藤を紹介する。

ケース1: 2才5カ月 女児

指吸いがひどく、上の前歯が萌えてきているので歯科健診で注意された、テープを貼ったり、夜はソックスを手袋にしてはめたりして、なかなかやめられない。

昼間は外に行き、遊ばせようとしている。

その間はよいのだから夕方、こちらも食事の支度など忙しいので、かまってやれずテレビを見ていると途端に始める。

かわいそうだが指にトウガラシを塗ってみたが、一時的にはやめるけれど、効果なしで困る。

この例からも指しゃぶりは、簡単に中止できないことがわかる。

また不容易に指導することは、母親を神経質にさせ、かえって健全な母子関係にヒビをいれる結果となる。

筆者は習癖があっても、開咬がなければ母親に指摘しないことにしている。

さて一般に小児科医は、指しゃぶりを全面的に否定することはほとんどない。

指しゃぶりを「心の栄養」・「心の杖」と表現し、“心の発達を育む”ために必要な道具として捉えられている。

また近年、指しゃぶりは、人生の初期において誰もが行う普遍的な行為とされている。

だとすれば、指しゃぶりの悪い面だけを捉えることは、子どもの一面しか捉えていないことになる。

歯科的には、指しゃぶりは問題行動ととらえられてきた。

しかし、乳幼児の行動にはそれなりの意味があるため、指しゃぶりを行う意味について考えてみる必要がある。

次回から、指しゃぶりの意味について考えることにする。

 

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