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究極の痛くない麻酔 その2

2009年08月17日

ポリクリで始めての麻酔を打ち終えた後、学生には次のような質問をする。

「麻酔を打った・あるいは打たれた瞬間、どのような音がしただろう?

物理的な音、心で感じた音を擬音語・擬態語で表現してください。

例えば、打たれた瞬間“アッ!”と思えば、あるいは一瞬目をパチッと閉じれば、それも音の一種です。」

このように言うと、“BUSU!”・“CHIKU!”・“PUSU!”・“PUCHI!”・“PUTSU!”・“BUCYU~!”・“PUTSU”・“GUZYA!”等さまざまな答えが返ってくる。

これらの中、一番痛そうな音について質問する。

そうすれば、“GUZYA!”や“PUTSU”が一番にあがる。

これらは、強圧をかけることで組織が座滅する音である。

それでは次はどうだろう?

そうすると、“GUSA!”や“BUSA!”と答える。

これらは、太い針で一気に刺入する音だ。

それではこれより痛くない音は・・・と問うと、

“PUSA!”・“PUCHI!”・“CHIKU!”・“PUTSU!”などとなる。

これらは細い針で刺した音である。

それでは“PUCHI!”・“PUTSU!”より痛みのないのは、どんな音だろう?

“FUCHI!”や“FUTSU!”位だろう・・・。

それでは、その次はどうだろう???

ここからが難しい。

“FU-”・“S-”としか答えようがない。

それでは、その先はどうだろう?

子音だけになり“F音”や“S音”となる。

さらに、その先はどうだろう?

ゆっくり眼を閉じて考えていただきたい。

「音がしない!」これが正解だ。

究極の痛くない麻酔・・・・・。

それは“音がしない麻酔”なのである。

そこでポリクリの学生には、
「どのようにしたら“音のしない麻酔”を打つことができるかを考え、工夫し続けることが痛くない麻酔の上達への秘訣だ!」
と教える。

学生にとって、始めて麻酔をするまでは患者さんの立場に近い。

ところがこの日を境に、患者さんの立場より歯科医師の立場に近づく。

患者さんにとって、麻酔は非日常的なものあり、一生に何百本も打たれることはない。

しかし歯科医師にとっては、どうだろう?

筆者も、卒業した頃は1日に少なくとも10回は麻酔注射を打っていた。

仮に1か月20日働くとすれば、月に200回麻酔をする計算となる。

1年に換算すると2、400回の麻酔である。

このペースで打つと10年間では24、000回、30年間ではなんと72、000回も打つ計算になる。

患者さんにとって非日常的な麻酔が、歯科医師にとっては“当たり前”になってしまう。

考えれば・・・これほど怖いことはない。

筆者もそうだったが、大学を卒業した頃は、年数が経てば経つほど、自分の臨床が高まると思っていた。

ところが、これは大間違いだ。

時間が経てば、経つほど下手になるものもある。

それは、患者さんの気持ちを忘れることである。

日常臨床の中にこそ落とし穴があるのだ。

そこで学生には、
「卒業しても時々、麻酔の音を聴くことが必要だ。でも、もし以前より音がするようであれば気を引き締めるように・・」
と伝えている。

それでは、先生が打たれる麻酔は・・・・・・。

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
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