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歯科医院経営で“今”やるべきこと【3】スタッフと膝を付き合わせてコミュニケーションをとろう

2013年08月19日

(1)院長の“想い”がスタッフに伝わっていない

歯科医院経営で、院長として“今”やるべきことの第3回は、スタッフに向かい合い、膝を付き合わせてコミュニケーションをとることです。
というのは、スタッフときちんとコミュニケーションをとっている医院はほとんどないからです。

どの院長も、地域にこんな医療を提供したい、うちで働くスタッフにはこんなに人間になってほしいなど、「想い」を持って、開業をしたことでしょう。
ところが、多くの医院の歯科衛生士に、院長がどんな想いや理想を実現したいと思っているのかを質問しても、これまで答えることのできた人は、ほとんどいないのです。

開業するにあたり抱いた想いは、経営の根幹を成すものです。
そこから、医院のフィロソフィーや理念、クレドなどがつくられるのを見ても、それがどれほど重要なものであるのかは理解できるでしょう。

それすら共有できていないのですから、どれだけコミュニケーションがないがしろになっているか、よくわかります。

ところで、このコラムを読まれている先生の中にも、マネジメントの勉強をしている人もいらっしゃると思います。
マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーは「組織は社会に貢献し、社会はその見返りとして、存続と発展を組織に与える。これが組織と社会の関係だ」と説明しています。

マネジメントとは、組織が成果をあげて社会に貢献できるように機能させるもの。
そのために、より組織が効率的に機能するための組織フレームや行動指針、各種ルールや決まりごとなどをつくっていくことになります。
ところが、組織フレームなどは、いわゆるハードにあたるもので、ソフトがないと機能しません。
どんなに高機能のパソコンでも、各種ソフトが入っていないと、ただの箱になってしまうのと同じです。

組織におけるソフトとは、組織で働く個々人のモチベーションです。
モチベーションを高めることができてこそ、マネジメントの取り組みも成果を出すことができるのです。
そして、モチベーションを高めるために外せないのが「コミュニケーション」なのです。

マネジメントに関心を持つ歯科医院経営者が増えたことは素晴らしいことですが、組織の体裁さえ整えれば、成果を出せると思っている人はまだまだ少なくありません。
もし、モチベーションがソフトであることを理解せず、真摯にコミュニケーションに取り組まないとしたら、残念ながら、どんなにマネジメントを学んでも、望むような結果を出すことはできないでしょう。

(2)院長はスタッフとのコミュニケーションにもっと時間を!

本当に良い医院をつくり、強い経営をするのに不可欠な、コミュニケーション。
そのために、どれくらいの時間を、院長はとっているでしょうか?

できない言い訳に
「仕事が忙しくて時間がない……」
「口下手で話を盛り上げるのが苦手だから……」
などといってはだめです。

そんなことを軽々しく口にすると、どんどんそのとおりになっていきます。
人は、自分の説得に一番応じやすい生き物だからです。
それに、時間はあるものではなくつくるものですし、話し上手でなくてもコミュニケーションはとれます。
別にスタッフを笑わせるのが目的ではないのですから、そんな心配をする必要はまったくありません。

スタッフは、植物のようなもの。
植物が、定期的にきちんと水をやらなければ枯れてしまうように、スタッフとも、定期的に時間をつくってコミュニケーションをとらなければ、スタッフのモチベーションは枯れてしまいます。
ただし、植物に水をやりすぎると根腐れするのと同じように、コミュニケーションもやりすぎると、スタッフを腐らせてしまいますから、その点は注意が必要ですが……。

ここまで書いて、思い出したのですが、私の知り合いの、ある企業の経営者は、スケジュールの中に、きちんとスタッフとコミュニケーションをする時間を入れてあります。
そして、大口の取引先と重要な打ち合わせ中であっても、それが重要な相談であっても、話が長引き、スタッフとのコミュニケーションの時間になると、「この後、スタッフとアポイントが入っているので」と席を立ってしまいます。

「そんなことをしていたら取引先がなくなって、収益が上がらなくなるのでは……」と思ってしまいますが、この企業は、失われた20年といわれた長い不景気の中でも、増収増益を続けた優良企業です。
そういった結果を出せたのも、この経営者が、スタッフとのコミュニケーションの重要性を理解していたからです。

私も、病院以外の場所でのスタッフと話し合う時間を、休診にして行ったり、診療の合間なども有効に活用しています。

しかし、歯科界には、まだ何かトラブルが起こった場合を除けば、スタッフとのコミュニケーションは、余った時間にすればいいものだ、といった感覚を持った先生が多くいます。
でも、時間が余った時に、水やりをすればいいという感覚では、植物を枯らしてしまうでしょう。

今週から先生がやることは、スタッフ1人ひとりにアポイントを取り、自分のスケジュール帳の中に、スタッフとのコミュニケーションの時間を書き込んでいくことです。

さぁ、やるべきことが理解できたら、早速、取りかかってみましょう。

 医療法人社団いのうえ歯科医院
 理事長 歯学博士・経営学博士
 井上 裕之
 ⇒ http://www.inoue-dental.jp/