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歯科医院経営で“今”やるべきこと【1】危機感があるから、人は知恵を絞り工夫し、行動を起こす

2013年07月12日

(1)歯科医院経営の未来にワクワクしてほしい

少し、歯科の未来について考えてみましょう。

2011年8月の日本経済新聞で、中山教授ら京都大学の研究チームが、マウスのiPS細胞、ES細胞から精子を作り出すことに成功。
作られた精子による受精、出産にも成功していたという記事を見たとき、鳥肌が立ったのを覚えています。

医療人である皆さんに改めて説明をする必要はないかもしれないが、iPS細胞は、ES細胞(胚性幹細胞)と同じように、さまざまな細胞への分化が可能で、再生医療・創薬への応用が期待できます。
たとえば、難病患者からiPS細胞をつくって解析すれば、発症原因や治療の糸口も見つかるかもしれません。

iPS細胞が画期的なのは、受精卵を利用せずに得られる万能細胞であるため、ES細胞の持つ倫理的問題を解決できるのではないかとして期待されている点。
それに、患者自身の細胞に特定の遺伝子を導入することでつくることができるので、iPS細胞から分化した細胞を患者に移植しても拒絶反応が起きにくいと考えられる点です。

おそらく、iPS細胞が最初に導入される医科のひとつが歯科でしょう。
それが現実になれば、歯科治療は根底から変わる可能性は十分にあります。
これまで、空想上でしか実現でなかった治療が現実になり、多くの人の苦が解消されることでしょう。
歯科医療の前には、まさに輝くような未来が広がっています。

といって、今回、考えたいのは、そういった歯科医療の未来ではなく、歯科医院経営の未来についてでしょう。

歯科医療の未来に対するのと同じように、歯科医院経営の未来にワクワクしている歯科医院経営者がどれだけいるのでしょうか。

少し前のデータになりますが、東京歯科保険医協会が2009年に都内の歯科医師を対象とした調査では「子どもを歯科医師にしようと思う」と答えたのは7%。これは、調査を開始した1983年の23%から大幅に減少した数字です。

子供に同じ職業を選択させたくないと考えているということは、それだけ業界の未来に希望を感じている歯科医が少ないということなのでしょう。
ある歯科大では「歯科医院はやり方次第でまだまだ儲かるといわれてきたが、そういった努力は限界を迎えたとの声が大きい」と教えていたといいます。
本当に教育機関が、そんなことを歯科医に伝えているとしたら、この業界は末期的状況だといっていいでしょう。

(2)危機感を持って、次の一手を真剣に考えた医院が発展する

このように、多くの歯科医院経営者が、医院の未来に危機感を抱えています。
でも、逆に考えると、これは素晴らしいことす。
なぜなら、危機感があるから、人は知恵を絞り、行動を起こすからです。

歴史を見ると、文明の発生は暖かい地域で起こり、文明の発達は寒い地域で起こっています。
厳しい自然環境ですと、未来に対する危機感も大きいので、人びとは努力や工夫をします。
厳しい冬を乗り越えられるかという危機感を持っているからこそ、人びとは寒さに耐えられる家や衣類、暖房器具や保存食などを工夫します。
その結果、さまざまな技術が発達するのです。
つまり、未来に対する危機感が、文明を発達させたといえます。

現在の歯科医院経営を取り巻く環境は、けっして恵まれたものではありません。
ですから、未来に危機感を持つのは当然の感覚。
後は、それをどう使うかだけです。

ボクサーのマイク・タイソンを育てた名伯楽のカス・ダマトは「恐怖は火のようなものだ。
うまくコントロールできれば、それで料理することもできれば、家を暖めてもくれる。
しかし、コントロールできなければ、周りを燃やし尽くして、おまえまで焼き殺すだろう」という言葉を残しています。
危機感とは、今のままでは危ないという不安や緊迫感のことですから、カス・ダマトのいう恐怖と同義語といっていいでしょう。

もし、現在の歯科医院経営を取り巻く環境を見ながら、危機感を持ってないとしたら、そのほうがよほど怖いもの。
昔より収入は減ったけど、それでも世の中の人よりは豊かだ…などと、安易に考えている人は、工夫や努力をすることもなければ、未来に対する備えもしないでしょう。
そういった経営者の医院が10年後、20年後にどうなる可能性が高いのかは、想像するに難くありません。

先生方には「このままではいけない!」という危機感を明確に持っていただきたい。
そして、この危機を乗り越えるために「今やるべきこと」を、一度、真剣に考えください。

私たちにできることは、まだまだあります。
某大学でいっていた「歯科医院はやり方次第でまだまだ儲かるといわれてきたが、そういった努力は限界を迎えたとの声が大きい」なんていうのは、嘘っぱちです。
そんな声に耳を傾けないでください。

歯科医院経営を取り巻く環境が厳しくなっているということは、危機感を持ち、次の一手を真剣に考えた歯科医院は、発展できるということなのだから。

医療法人社団いのうえ歯科医院
理事長
歯学博士・経営学博士
井上 裕之 ⇒ http://www.inoue-dental.jp/