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カバの大あくび

2011年08月01日

カバは、水の中に住む草食動物である。

日中は水中に潜み、夜間になると上陸しエサを食べる。

(図1)

一見すればおとなしそうに見えるが、神経質で凶暴な動物である。

アフリカでは、カバに襲われ死亡する者が後をたたない。

ところで、カバは大きな口を開けている光景を目にする。

これを見て“カバの大あくび”と揶揄される。

(図2)
 

おかげでむし歯予防週間には、各地の動物園でカバの歯磨きが行われる。

ところでカバは、どうして大あくびをするのだろう?実はこれ、威嚇行動の一種である。

カバは、縄張りをおかされると、相手に攻撃をしかけるのだ。

面白いことにカバ同士の争いは、どちらが大きな口を開けるかにかかっている。

大きな口を開けた方が勝ちなのである。

負けた方は、口を閉じ。

勝った方は、さらに大きな口を開ける。

なんと150度も開くという。

だから動物園の行楽客に口の中を見せることは簡単とのこと。

雄のカバの目の前で手を上げると、負けじと大きな口を開ける。

手を上げている間は、口を開け続けるのでじっくり観察できるのだ。

さて、そのあくびも大きな牙を見せつけるためのものである。

牙を見せる事で、己の強さを強調している。

最初は小さな口だが、クチビルをまくりあげると同時に牙をむき出し、口を開く。

そうすると歯が飛び出すように見える。

大きな口を開けることで、互いが傷つく争いを避けているのだ。

さて動物園の動物は、食欲が低下すると、口の中に問題があることが多い。

数年前、獣医師から依頼され某動物園へカバの往診に行った。

カバの口をよく診ると歯グキが腫れていた。

(図3)

カバの前歯や牙(犬歯)は無根歯であり、生涯歯が伸び続ける。

このため歯が適度に摩耗しないと、下顎の牙が上顎の皮膚を突き破ることもある。

このケースの場合、上下の牙の当たり方に問題があり、外傷性咬合を起こしていた。

とりあえず歯グキに抗生剤の軟膏を挿入し、水で溶け出さないようワセリンを塗りつけた。

後日、歯科用の電気エンジンを持参し、獣医師に牙が強く当たる部分を削合していただいた。

おかげで無事、食欲は回復した。

あの時のカバ、今も行楽客にあくびを楽しませていることだろう。

>>岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/