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歯科医院経営でやってはいけない10か条 /【第9条】行動につながらない「伝え方」をしない【第10条】小手先のコミュニケーションノウハウに頼るな

2012年07月06日

【第9条】行動につながらない「伝え方」をしない

コミュニケーションという言葉ほど一般的に使われていながら、多くの人に誤解されている言葉はないのではないでしょうか。

多くの人は、話しをするのがうまい人、自分の考えを伝えるのがうまい人を、コミュニケーションが上手な人だと思っています。
中には、社交的な人がコミュニケーションのうまいと思っている人すらいます。

本当のコミュニケーションとは、相手と情報の授受をすることで、心情を共有し、そして相手に行動を起こさせるものです。
つまり、うまく相手と話をすることができても、それによって相手の心が動き、納得し、実際の行動が起こらない限り、コミュニケーションが成立したとはいえないのです。

話は飛びますが、歯科医院経営者と話をしていると、  「スタッフに注意をしても改善されない」
 「指示したとおりにやらない」
 「何度いっても理解しない」 といった相談を受けることがあります。

確かに、何度伝えてもスタッフが変わらず、同じ過ちを繰り返すことは大きなストレスでしょう。
時には、解雇の二文字が頭の中をちらつくことすらあるようです。

しかし、結論を出す前に考えていただきたいことがあります。
それは「本当に話した内容が伝わっているのか?」ということです。

注意をしたから、説明したから、話をしたからといって、伝わっているとは限りません。

相手が理解できていないということや、誤解して受け止めるといったことは頻繁に起こるものです。
普段の生活の中でも  「あれって、そういうことだったの?」
 「そんなつもりでいったんじゃないんだけど……」 という経験をしたことは誰にでもあるでしょう。

では、スタッフが理解できなかったり、誤解をしたりしたとしたら、その責任は誰にあると思いますか?

理解力が低かったスタッフが悪いのでしょうか?
もし、そう考えているとしたら、この種の問題はいつまでも解決はしません。
あなたはこれからも何度も同じこと伝え、そしてスタッフは同じ過ちを繰り返すことになるでしょう。

でも、相手が理解でき、誤解しないように伝えれば、この問題はすぐに解消することができます。
つまり、伝わっていない責任は伝える側にあるのです。

表面的な言葉のキャッチボールをしただけで、
 「伝えたつもり」
 「伝わったつもり」
になるのではなく、スタッフの心に響き、目標に向かって行動を起こさせる本物のコミュニケーションをとることです。

【第10条】小手先のコミュニケーションノウハウに頼るな

海外の人と話をしていて、国によって文化や習慣が違うことに驚いた経験があるでしょう。
日本ではごく当たり前の習慣が、ある国ではとても失礼に当たることがあります。

これは、同じ日本でも地域によって文化や習慣が異なるので、ある地域では当然となっている習慣が、他の地域の人の目には驚きに映ったりするのです。

そもそも人間は、地域による文化や習慣の違いだけでなく、異なる家庭環境で育ち、異なる教育を受け、異なる価値観や人生観を持っています。
もちろん性格も違います。

コミュニケーション能力が高いといわれる人たちは、まず相手と自分の違いを把握しようとします。
会話の中でそれを判断するための情報を集め、相手を分析するのです。
そして違いを踏まえた上で、相手が正しく理解・納得し、共感するように伝えます。
ですから、相手に行動を起こさせることができるようになるのです。

コミュニケーションは、経験だけでスキルアップできるものではありません。
もし、それができるなら、年齢を重ねた人たちはみんなコミュニケーションの達人になっているはずです。
しかし現実は、歳をとるほどに頑固になり、人との調和すらとれなくなる人が多いのです。

世の中には「話し方教室」といようなコミュニケーションの研修などもありますが、そういった小手先のノウハウではなく、きちんとした理論に興味を持つ歯科医院経営者が増えてほしいと思っています。
それは強い組織をつくり、収益を伸ばせる歯科医院になるだけでなく、患者さんに本当に安心して治療を受けていただくことにもつながるからです。

大変な時代だとよくいわれますが、大変とは大きく変わること。
私たちは今、大きく変化するためのチャンスの中にいるのです。
このチャンスを活かし、患者さんやスタッフを元気にするだけでなく、歯科界から世の中を元気にしていける本物の経営者になっていきましょう。

医療法人社団いのうえ歯科医院
理事長歯学博士・経営学博士
井上 裕之
http://www.inoue-dental.jp/