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何故、旭山動物園の動物たちは元気なのか? その5/動物的な生き方と植物的な生き方

2012年06月22日

これまで、動物園の動物は動かないから“つまらない”という声がよく聞かれた。
実際、あまりにもライオンが動かないので、観客は“たてがみ”に火をつけて動かそうとした話がある。
また、チンパンジー舎にタバコを投げ入れ、ボヤ騒ぎになったなど信じられない話もある。

でもどうして動物は、動かないのだろう?
そもそもライオンやトラなどは、夜行性なので日中は動かないのが普通である。
また動物園では、エサを与えられているので獲物を捕る必要がない。
しかも自然界では、日常的に空腹であるため、腹をすかしていなければ、無駄なエネルギーを使おうとはしない。
だから動かないのだ。

ところで動物と植物の違いは何だろう?
単純に考えれば、“動く”のが動物、“動かない”のが植物である。
しかし、サンゴ虫は動物なのに動かないし、オジギソウは植物なのに動く。
どうやら“動く”、“動かない”だけの問題ではなさそうだ。

さて植物細胞は硬い細胞壁を持つが、動物細胞は持たない。
これも差の一つである。
細胞壁により植物は形を保つことができる。
一方、動物にはないので動き廻ることができる。

他にも植物は、水と二酸化炭素があれば光合成でエネルギーを作り出すことができる。
しかし動物はそれができない。
だから獲物を捕らえるために体を動かす。
これが動物の本能だ。

動物園で、エサに不自由しない動物は体を動かす必要がない。
これは、“植物的な生き方”と言える。

旭山動物園で、ホッキョクグマがプールに飛び込むシーンがある。
子どもの頭をエサと勘違いして飛び込むのだ。これは動物的な生き方を利用していると言える。
(図1)

 

 

また、サル舎では展示ガラスにハチミツを塗る。
こうすればサルはガラスのハチミツをなめる。
この行為も極めて動物的だ。
おかげで我々は、大きな牙をゆっくり眺めることができる。
(図2)

旭山動物園の動物が元気なのは、野生動物の本能と習性を熟知し、それを上手くコントロ-ルしているからなのだ。

追記:旭山動物園に行かれる時は、事前に以下の本をお勧めします。
新たな視点から動物を捉えることができます。

旭山動物園の主な関連書:
1.「旭山動物園」革命 小菅 正夫著. (角川oneテーマ21)
2.旭山動物園のつくり方 原子 禅著  (文春文庫PLUS)
3.生きる意味って何だろう? 旭山動物園園長が語る命のメッセージ小菅 正夫著(角川文庫)
4.旭山動物園の奇跡  SPA!編集部
5.旭山動物園へようこそ! 坂東 元著 二見書房 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
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