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【1】日本における歯周病の実態-成人の80%が歯周病?- 早期発見・早期対応が求められる歯周病治療

2017年10月02日

こんにちは。

京都府京田辺市で開業しています、牧草一人です。

このメルマガでは6回にわたり、
「患者説明にも役立つ!目からウロコのペリオ講座」と題して、
皆さんの日々の臨床に役立つ話をお届けできたらと思っております。

第1回は、日本における歯周病の実態についてお伝えします。

わが国において、成人の80%以上が何らかの歯周病に罹患しているという
驚くべき数字が示されており、実際にネット検索すると、この数値に関する多くの情報が供覧できます。

もちろん、この情報源は厚生労働省の歯科疾患実態調査によるものであり、
非常に信頼性の高い情報源なのですが、
ここには「歯石の沈着」や「プロービング後の出血」など、比較的軽度の所見も含まれています。

私たち歯周病専門医がむしろ注目する数字は、
歯周ポケット4mm以上6mm未満(中度歯周炎)と
歯周ポケット6mm以上(重度歯周炎)なのです。

65~69歳のカテゴリーでは、
歯周ポケット4mm以上6mm未満が35.5%、
歯周ポケット6mm以上が15.2%であり、
これらを合わせると50.7%、
つまりこの年齢では2人に1人の中度・重度歯周炎患者さんがいらっしゃることになります。

次に、働き盛りである45~49歳のカテゴリーを見てみますと、
歯周ポケット4mm以上6mm未満が24.8%、
歯周ポケット6mm以上が5.7%であり、
これらを合わせると30.5%、
つまりこの年齢では3人に1人の中度・重度歯周炎患者さんがいらっしゃることになります。

さらには、25歳から29歳のカテゴリーでは、
歯周ポケット4mm以上6mm未満が11.5%、
歯周ポケット6mm以上が2.5%であり、
20歳代後半でもすでに中度・重度歯周炎の患者さんが14.0%もいらっしゃることになります。

私は、軽度も含めて全体で80%というよりも、むしろこの数字に驚きました。

歯周病治療の基本は早期発見・早期対応であり、
もっとも大切なことは予防であるのはいうまでもありません。

しかし、実際にはこれだけの数の患者さんがいらっしゃるのも事実であり、
中度・重度歯周炎の末路は抜歯であることも周知の事実です。

では、なぜこれだけの数の患者さんが歯周病を放置していらっしゃるのかが疑問になります。

通常、患者さんが医院を受診される理由は「疼痛」や「機能障害」であり、
歯髄炎や智歯周囲炎の痛み、補綴装置の脱落や義歯の不適合などは非常にわかりやすい主訴となりえます。

しかし、歯周病で「疼痛」や「機能障害」が発現するステージこそが中度や重度歯周炎であることから、
どうしてもこの時期での来院となります。

そこで歯科医院ができることは、歯周組織再生療法や抜歯となり、
抜歯後にはインプラントを含めた咬合機能回復処置がマストとなり、
術者側にも患者側にもハードルが上がってしまいます。

もちろん、私たち歯周病専門医はこの領域を業務としているのですが、
一般歯科医院において中度・重度歯周炎の患者さんへの対応は苦慮されているともお聞きします。

そこですべての歯科医院で対応可能な患者さんは軽度歯周炎です。

前述したように、軽度歯周炎の場合には疼痛や機能障害をともなわないことから、
冒頭で述べた数字をもとに歯科衛生士さんともども患者さんにお話をされ、
歯周病の診査をお受けになられるようにお勧めしてはいかがでしょうか。

通常、歯周病の診査は6点法ポケット測定に代表される歯周組織検査とデンタルX線14枚法が用いられます。

また、最近ではコーンビームCT(CBCT)の普及にともない、
デンタルX線やパノラマX線などでは診断できなかった
唇側・頬側部、口蓋部・舌側部や根分岐部の複雑な骨形態も詳細に観察することが可能となりました。

インプラント治療をベースに発展してきたコーンビームCTがむしろ歯を守ることに役立っているのは非常に興味深いことです。

このような技術革新は、これまで熟練が必要とされてきた医療業務を平易にしてくれ、若い先生や歯科衛生士さんにとっても福音となります。

患者さんにとっても、痛みをともなわずにひっそりと進行する歯周病を早期に発見してもらえることから、そのメリットは絶大です。

もちろん、そこから得られた情報は智歯抜歯や歯内治療でも役立つので、
非常に医学的価値の高い診査となります。

加えて、潜在患者の獲得など医院経営面でも貢献してくれることは間違いないでしょう。

私はいつも患者さんに問います。

「シャワーを浴びていて血が出ていても放置しますか?おそらく慌てて病院に行かれるでしょう?では、歯磨きしていて歯ぐきから血が出ても同じではないですか?」

本稿を読まれた先生や歯科衛生士さんが冒頭の数字に気づきを覚え、
歯周病診査や歯周病の早期対応に積極的に取り組まれることで、
将来的には中度や重度に移行することが考えられる「歯」や「患者さん」を救っていただけましたならば、
それが私の本望です。

牧草歯科医院院長
牧草 一人
http://www.makigusadental.jp/