スマートフォン版サイト

MAIL MAGAZINE メールマガジン

【4】ファイバーシステムの選択基準は?

2017年05月15日

皆様、こんにちは。渥美克幸です。

本連載も折り返し地点を迎えましたが、前回から支台築造の各論的内容についてお話をしています。

まずは内容を簡単におさらいしましょう。

予知性の高いファイバー併用レジン支台築造を行うにあたり、
私が最重要と考えるポイントは以下の3つ。

1)歯肉縁上歯質の獲得
2)ファイバーアレンジメント
3)根管象牙質との接着

・築造が完了した歯は、その部位によってコア、ポスト、サービカルに分けることができる。コアは歯冠部の築造体、ポストは根管内の築造体、そしてサービカルは歯肉縁上歯質を指す。
・サービカル(=歯肉縁上歯質)が失われている状態では、何をやっても失敗する可能性が高い。

さて、今回は第2のポイントである「ファイバーアレンジメント」にかかわる問題について考えていきます。

●ファイバーポストにもいろいろあるけれど

よく「お勧めのファイバーポストを教えて」という質問を受けるのですが、その都度困ってしまいます。

理由は単純で、人によっていいと感じるポイントが異なるからです。

ですので、まずは比較検討すべきポイントについて考えてみましょう。

ちなみに、価格はもちろん大きな問題ですが、今回は脇に置いておきますね。

ファイバーポストは一般的に、ガラス繊維(グラスファイバー)を束ねて
マトリックスレジンで固め、それを任意の形状に削り出すことで作られます。

見た目は基本的に透明がかった白色です。

またテーパーやアンダーカットが付与されていたりいなかったりという違いはありますが、ほぼ柱状です。

初めに、ファイバーポストを構成する材料について見てみます。

グラスファイバーは、その組成によってEガラスやSガラスなどに分類されます。

これらは物性や吸水性などが異なりますが、
それだけがファイバーポストの性能を決めるわけではないため、
私はあまり気にしていません。

一方で、マトリックスレジンは重要です。

これには主にアクリル系とエポキシ系が用いられますが、
結論から言うと、私はエポキシ系を採用しているファイバーポストは使いません。

これは、ほぼすべてのコンポジットレジン(支台築造用も含む)がアクリル系ですが、
これとエポキシ系レジンを接着させることができないからです。

その理由は重合反応が異なる云々……なのですが、
あまりにもマニアックな話になるので割愛します。

次に、形状について見てみます。

まずテーパーに関してですが、
ついていたほうがポスト孔に挿入しやすいのかもしれませんが、あまり大きな差は感じません。

ただ、テーパーがついているということは、先端に向けてどんどん細くなり、部位によってサイズが変わるということです。

そのような認識をもって使わないと、思わぬミスにつながる可能性があります。

一方、アンダーカットが付与されている製品もありますが、
これは機械的嵌合効力を増してポストが脱離しにくくすることが目的だと思われます。

しかし、これは既製金属ポストをセメント合着していた頃の名残では?
と考えています。

ファイバーポストは支台築造用レジンと接着させることが前提ですし、
アンダーカットを付与することは、その部分のグラスファイバーを断裂させていることと同じ(=強度不足に陥る)なので、私は不必要だと考えています。

つづいて、物性についてです。

第2回でもお話ししましたが、私が支台築造体に求める物性は、象牙質よりも高い曲げ強さと、象牙質と同等の弾性係数です。

これは象牙質よりも壊れにくく、かつ象牙質と同様のひずみ挙動を示すことを意味します。

一般的なファイバーポストは両方の物性を兼ね備えていますが、
弾性係数が象牙質よりもかなり高い(=しなやかではない)ことを特徴とする製品も存在します。

当然、私の考え方とは異なりますので、
これらの製品を使用することはありません。

最後に、光透過性についてです。

「えっ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

なぜなら、どの製品のパンフレットを見ても「当社の製品は光を通して……」と記載してあるからです。

もちろん、ファイバーポストは光を透過させます。

しかし、製品によって光の透過率は大きく異なります。

これは、目的の波長の光が透過するように調整されなければ、
いかにグラスファイバーといえども光の透過率は大きく下がってしまうためです。

そして、透過率を上げるのは意外と難しいらしいのです。

つまり、ほぼ大部分のファイバーポストは、
期待しているほど光を透過させていないことを前提に使用する必要があります。

「たいして光を透過しなくても、支台築造用レジンってデュアルキュアだから、化学重合に期待すれば……」
と思った方、その認識は危険です。

それがなぜかについては、接着のパートで解説します。

●比較検討すべきポイントは?

比較検討すべきポイントをまとめると、このようになります。

まず、エポキシ系を使用しているもの、アンダーカットが付与されているもの、
弾性係数が象牙質と比べてかなり高いものは使用していません。

テーパーについてはこだわりませんし、
光透過性は高いほうがいいと考えています。

これらを満たす製品が、
サンメディカルから発売されている「i-TFC 光ファイバーポスト」です。

国内外問わず、さまざまな製品を試しましたが、これが現在の私の第一選択です。

「i-TFC 光ファイバーポスト」は、高い導光性を誇る光ファイバーを中芯にして、
周囲をグラスファイバーで編み込み、マトリックスレジンを含浸させポストに成形するという、
非常に手間のかかる作り方をしている製品です。

特筆すべきは、中芯に光ファイバーが組み込まれていることで、これによりもっとも光の届かない根尖方向へ導光できます。

その結果、普通では重合させることのできない根尖部のレジンを確実に光重合させることができるのです。

●i-TFCシステムとは?

i-TFCシステムは、サンメディカルから発売されている支台築造システムです。

詳しいことはホームページ等をご覧いただきたいのですが、
前述の光ファイバーポストも含めさまざまな特徴があり、
本システムのみでどのようなケースにも対応することができると考えています。

光ファイバーポストと並んで、とくに利便性が高いのが、
グラスファイバーを外径2mmのチューブ状に編み込み成形した「スリーブ」です。

「筒状のファイバーなんて何に使うの?」という声が聞こえてきそうですが、これが非常に便利なんです。

予知性の高いファイバー併用レジン支台築造を行うための重要なキーの1つに「ファイバーの配置」があります。

ファイバーを使用する場合、
既製金属ポストのように常に真ん中に配置するのではなく、症例ごとに最適な配置を検討する必要があります。

その設計と実技を「ファイバーアレンジメント」と呼んでいますが、この概念を知っていただくと、
スリーブが有用である理由を理解していただけると思います。

この点は、次回お話ししますね。

●改めて、ポスト長を決定する基準は?

前回ポスト長に関してお話ししましたが、ファイバーポストを用いる場合は弾性係数が象牙質と近似していること、
また接着を前提としていることなどから、金属系ポストほどの長さは必要ないかもしれない、という考察をしました。

ただ、「具体的にどれぐらいの長さがあればいいのか?」という点については、今のところ統一した見解がありません。

私なりの臨床的な基準ですが、ポスト孔形成が終了したときに、根管充填材断面の直径が0.9㎜程度になるようにしています。

これは、私が使用しているi-TFC光ファイバーポストの一番細いものが直径0.9㎜であることが理由です。

それ以上ポスト長を長く設定しても、
基本的に根管は根尖に向かって細くなっていくため、先端径は小さくなります。

そうなると当然ファイバーはポスト孔先端まで挿入できません。

さらに窩洞形態が長く細くなるので、接着操作の難易度が格段に上がってしまう、というデメリットもあります。

また根管充填材の長さは5㎜程度残すべき、
とされていますので、その点も配慮しています。

●まとめ

今回は、私が考えるファイバーシステムの選択基準などについてお話をさせていただきました。

次回は、今回の内容をもとに「ファイバーアレンジメント」について考えていきます。

お楽しみに!

[今回のポイント]
・ファイバーポストにもいろいろあるが、私はアクリル系レジンを使用しているもの、アンダーカットが付与されていないもの、弾性係数が象牙質に近いもの、などを選択基準にしている。
・ほぼ大部分のファイバーポストは、期待しているほど光を透過させていない。

デンタルクリニックK
渥美 克幸
http://www.dck2010.com/